創作刀剣
​■創作刀剣・登場人物

星乃宮村正(ホシノミヤ ムラマサ)
刀派・村正/打刀/120㎝ 

  • ありとあらゆる点で問題のある無責任刀剣。

  • 著作権的に問題のある発言が多く、やかましく、独特なせりふ回しをする(某無責任ヒーローの影響らしい)。

  • 過去の経歴は不明。本人もはぐらかす。身のこなしから、忍びに由来する刀だと推測される。

  • お菓子、キャラクター、女の子(黒髪ツインテールが性癖である)が大好き。

  • 全体的にコスチュームは赤と黒で統一されている(返り血を浴びても分からないから)

  • 村正の伝説についてはあまり関心がない。自分をスペシャルと言いつつ、堂々と大型ダブルアクションリボルバーを使う。

  • 一人称はボクちゃん。

  • 審神者に対しては、どういうわけか“ママン”である。10代の女の子であった場合、“ボクちゃんのハニー”などと無礼な発言をする。

  • 刀剣に対しては誰に対しても“~兄やん”。石切丸のみ“パパン”である。

  • とんぼの兄やん、せんごの兄やんが大好きである。

  • 夢は刀ミュに参戦し、可愛い女の子達にファンサすることらしい。

​●星乃宮乱舞 1

暗殺は失敗に終わった。

 

計画は完璧だった。優れたリーダーによって構成された暗殺部隊は、その計画を完璧に遂行出来るだけの力と才能があった。そして生き残れるだけの運も持ち合わせていた。

 

失敗など、それこそ天地がひっくり返るぐらいの、つまりあり得るはずもない現象でも起きなければ、あるはずもないのだ。つまりあれだ、失敗などあり得ないのだ。絶対にあり得ないと確信していた。

 

しかし暗殺は失敗た。それもバカバカしいぐらいにもみくちゃにされた。

 

深夜の、それこそ草木も眠る真っ暗闇の時間帯に、息を殺して忍び込んだというのに。本丸内はすぐに大騒ぎになった。まるで全てあらかじめ予知していたかのように、完璧な才能を備えた暗殺者たちは投げ飛ばされていった。

 

審神者の寝室へ襲いかかろうとした一人は、三日月宗近の転がしたワインの瓶でスっ転び、コートの下から刀を抜き出しかけた者は、石切丸のフライング・ボディ・プレス(プロレス技のアレである)で、馬小屋の壁に叩きつけられ、失神した。

 

他の暗殺者たちも悲惨だった。否、悲惨どころではない。そんな言葉では言い切れない絶対的な絶望が、有無を言わさず襲いかかろうとしていた。

 

馬フンを山のように詰め込んだ肥溜めの沼に転がり落ちるわ、審神者に叱られてムシの居所が悪すぎるへし切長谷部のドロップ・キック(これもプロレス技のアレである)が腹にめりこむわ、もうムチャクチャである。

 

そのなかで、運良く逃げだせた一人がいた。ぶっちゃけ名前なんかどうだっていいのだが、とりあえず田中ということにしておこう。

 

(畜生、な、なんて本丸だっ!)

 

田中はメチャクチャにされまくっている仲間たちを見捨てながら、声なき声で叫んだ。その獣にも似た声は、彼が信じる神に届くはずもなく、闇の彼方へと溶けていく。

 

(とにかく、とにかく逃げなければっ・・・!)

 

そう、とにかく田中は逃げなければならなかった。アジトに戻れば、まだ仲間が多数存在している。彼らと合流さえすれば、たぶんきっと大丈夫だ。合流して、片付けられなかった審神者と、刀剣男士どもをどうにかしなければならない。

 

最悪、審神者を拉致して人質にするとか、審神者の親族を人質にするとか、とにかくそういう手段を使って、どうにかしなければならない。

 

(とにかく逃げなければ・・・)

 

田中は思った。どうにかして、それこそ命懸けでこの場を逃げのびなければ。逃げて、逃げて、逃げて・・・とにかく逃げまくって、二度目の襲撃に参加しなければ。そうしなければ、約束された報酬を受けとることが出来ない。

 

(それは駄目だ、絶対に、絶対に、絶対にだ・・・!)

 

するとその時、そっと、誰にも気づかれないように距離をとる田中の視界に一人の少年(いや、ひょっとすると少女かもしれない)の姿が映った。

 

有り体に、まともな格好をしていなかった。見た目こそ、アイドルのように可愛らしい顔をしているが、忍者らしいコスプレをした少年である。

 

黒と赤で統一された忍者のコスチュームは、某オタクの祭りで良く見るコスプレのそれに見えた。しかもミーハー的なノリで作った衣装じゃなくて、徹夜の限りを尽くして作り上げた完璧すぎる衣装だった。頭にキツネのお面をつけており、それが余計におかしく見えた。

 

少年は着色料をふんだんに使ったペロペロキャンディーを舐めながら、闇の向こうから大股で田中の方へやってきた。ピンクとホワイトのツートンカラーで染められた髪が、弾むように揺れている。それと共に、背中に装着された刀(打刀だろうか)が、ひどく鈍い音をたてていた。

 

田中の頭の片隅で、緊急警報が鳴り響いた。それは轟音となって、彼の脳みそを叩きつける。

 

この少年、ただものじゃない。否、ちがう。そういった類いの存在じゃない。要するにアレだ、ロクでもない奴に違いないと直感したのである。

 

田中の直感は正しかった。そして、気づくのが遅すぎた。

 

ペロペロキャンディーを舐めながらやって来た少年は、いきなり懐から取り出した大型ダブルアクションリボルバー(よく、強い刑事が使ってるカッコいい銃)を、田中へ向けると、ためらいもなく射撃を開始した。

 

「ああああっ!?」

 

足下に銃弾を喰らってしまった田中は、階段にほうり出された。身体と心が痺れまくっていて、起き上がれない。そして失禁していた。田中は子供の頃から、失禁をしたことがなかった。それが自慢であり、誇りでもあった。この瞬間、彼の全ては虚しく朽ち果てた。

 

少年はムチャクチャだった。少年はメチャクチャだった。少年は狂っていた。もみくちゃにされている田中の仲間たちにも次々に大型ダブルアクションリボルバーを向け、銃弾をかすらせて失神させたのである。

 

「お前っ、お前はルパ⚫三世の次⚫大介かっ!?」

 

田中は思わず叫んだ。著作権的に問題のある発言だと分かっていても、そうせずにはいられなかった。正直、それくらいバカバカしい言葉しか思い付かなかったし、それが一番分かりやすい例えだとも思った。

 

「来るなぁ!来るなぁこの次⚫大介っ!!」

 

などと叫んでいる間に、少年はゆっくりと田中の方へ近づいた。おそらく、というか確実に、田中が一番元気そうに見えたからであろう。

 

「来ないでくれぇぇっ!」

 

田中はなんとか逃れようとした。全神経を駆使して、どうにか逃げようとした。でも無理だった。どうすることも出来なかった。下半身が動かない。別に性の営みに溺れているわけでもないのに、彼の息子を含めて機能を停止している。

 

田中は必死になって動かした右手で刀を抜き出し、少年へ向けた。

 

しかし少年は刀が見えないような態度で悠然と近づき、相変わらずペロペロキャンディーを舐めながら、田中を見下ろしている。こんな状況で書くのも何なんだが、少年の脚は異常なほど細くて美しい。パンツは見えなかった。一応、そういう設定になっているらしい。

 

とにかく少年はゆっくりと、まるで道化人のような口振りで喋りだした。

 

「パンパカパーン!ざーんねんでしたーっ!ボクちゃん次元⚫介地雷なんだーっ!石川五⚫門って言ってくれないかなぁっ!?ボクちゃんみたいなスペシャルな刀剣にピッタリだと思わないっ!?あ、ボクちゃんの名前は星乃宮ーっ。村正シリーズの最高にしてスペシャルな超イカした刀剣!ちなみに経歴とかは気にしないでねーっ!どのみちボクちゃんも君も一発キャラだ!」

「い、一発キャラ?」

「そうそう一発キャラ!わかってくれて嬉しいぜ、心の友よ!」

 

星乃宮と名乗る少年は、大型ダブルアクションリボルバーをくいくい、と楽しげに振った。

 

「ちなみにこいつは、ボクちゃんの相棒大型ダブルアクションリボルバー、通称S&W M29 6インチ!。ブ⚫ックラグーンで知ってる!?そこに出てるイカしたハゲメガネが使ってるやつだ!もし君の頭に当たれば、スイカのようにはじけ飛ぶぜ!ちなみにママン(審神者)の霊力で、飛躍的にパワーも上がっているぜっ!といういかにもこの場限りの設定だっ!どうだ!怖いだろっ!こいつの装弾数は6発!・・・なんだけど、ボクちゃん慌てん坊だから、何発撃ったか忘れちゃったんだーっ・・・ねぇ、君覚えてない!?」

「は・・・?」

 

田中は猫のように目を丸くした。一応彼はエリート暗殺者である。そんなの言われなくても分かっている。一発だ。

 

しかし星乃宮は、田中にはよく分からない理由で、自分の芝居をすすめるつもりのようだった。星乃宮は、ひどく大げさに顔をしかめて言った。

 

「んーーっ!分からないよねっ!?ボクちゃんも分からなくなっちゃったっ!・・・確かぁ、五発か六発のどちらかと思うんだーーっ!ボクちゃん算数苦手だからさぁーー・・・ね、どうしよっか!?六発だったら、ボクちゃんを刺せば逃げられる。あ、背中の刀は気にすんな!ボクちゃん男の約束は守る主義だからなっ!で、五発ならーー・・・刀を動かした途端、君はジ・エンドだっ!」

「ななななななっ・・・おまっ、待って、いっ、一発残ってる、残ってるってば!?」

「はぁぁっ!?空気読めよこの⚫⚫⚫野郎!ここはボクちゃんっていうスペシャルな刀剣が、ガツンとお前を倒す最高にカッコいい場面になるんだよっ!お前男だろーーっが!?ちゃんと⚫⚫⚫ついてんのかこの野郎っ!!ほらさっさでと言えよっ!覚悟を決めろよっ!ほらっ!!」

 

星乃宮は下品な言葉を連発するや否や、さっと大型ダブルアクションリボルバーを突きつけた。田中は確信した。こいつは危ない奴だ。こいつは、ヤバイ奴だ。頭の中がとんでもないくらいグチャグチャになっている。

 

(ヤバイ、ヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイ)

 

逆らっちゃいけないと確信した田中は、赤ン坊のように手を全力で振り回した。同時に彼は、情けないぐらいに泣いている。

 

すると星乃宮は笑った。初々しい笑顔とは違う、不気味なものだった。

 

「はいはい動いたねーっ!」

「えっ・・・まっ」

 

田中は目を限界まで見開いた。まるで魔界からわき出た魔物を見るような顔をして、彼は命を擦りきらして叫んだ。

 

しかし彼の命乞いは、星乃宮という魔物に届くことはなかった。誰にともなくうなずいた星乃宮は、田中に向けて大型ダブルアクションリボルバーを放った。頭ではなく、腕をかするように放ったのだが無事で済むはずもない。今まで味わったことのない強烈な衝撃を受けた田中は、一発キャラらしい悲惨さで吹き飛ばされ、壁に叩きつけられた。

 

言うまでもなく重傷である。

 

起きあがるどころか、話すことすら不可能だろう。あ、ちなみに、星乃宮が吹き飛ばした他の連中も同じである。

 

「パンパカパーン!ざーんねんでしたーっ!五発だったみたいだねーっ!うん、お疲れさんっ!」

 

星乃宮は満足げにいい終えると、大型ダブルアクションリボルバーをしまった。そしてゆっくりと、ペロペロキャンディーを舐めはじめる。

 

これが本丸最大の問題児となる、無責任刀剣星乃宮村正の初陣だった。

 

つーか刀剣なら、刀抜けよ。

​●星乃宮乱舞 2

佐脇水花の本丸は、ひっそりと静まり返っている。月光は暗闇に吸い込まれ、消えていく。まるで真空のような静けさが、しみじみと漂っているようだった。

 

佐脇水花はすでに寝室へ引きこもっている。

 

佐脇家専属の職人が内装を指示しただけあって、寝室の内装はおどろくほど上品で洗練されていた。

 

室内には、花のエキスの濃厚な香りがたちこめており、ただ呼吸しているだけで人を酔わせるだけの力があった。

 

最高級の生地を用いたカーテンが、わずかに開かれた窓から吹き込むしっとりとした夜風に揺れていた。

 

周囲には薄絹のベットカーテンがさげられた四柱式寝台が、ゆっくりと、そしてかすかに軋んだ。

 

おそろしいほど甘やかな、それでいて泣くような声が響きわたる。

 

「んっ……ああっ、あおさんっ……」

「水花ちゃん……」

 

……うん?

 

「だめっ、そんなっ……そんなに深く……だめ、だめっ……おかしくなっちゃう……」

「んふふ……おやおや、どうしたんだい?……こんなに濡らして……ダメじゃないか」

「ごめんなさっ……ああ、やだっ、そんなにっ、そんなにっ、強く吸っちゃ……だめっ……はぁっ……」

 

あれぇ?なんかちょっとまずい方向に突進してない?それにしてもその、胸やけしそうなほど甘いというか何というか……。

 

「ねぇ……今どんな感じ?」

 

「んっ……あおさ……私、もうだめっ……もっと……もっと強く……ああ、あおさん……」

「んふっ、可愛いこと言うねぇ……いいよ?」

「あっ、あんっ……あおさん……わ、私もう……溶けちゃう…溶けちゃいそう…私、私もう……」

 

うわぁぁぁぁぁっ!さすがにこれ以上はまずいだろっ!?

 

いかん、いけません。違いますよ。今回のお話はそういう方向じゃありませんからね。筆者的には大変喜ばしいことなんですけど、どっちかっつーと未成年の方々にもお読みいただけるようなお話になる予定なんですからね。とにかく、とにかくダメですよ。

 

それよりまあぁぁぁぁっ、うわっ、そう言ってる間に、この人たち勝手に盛り上がってる。ちょっと待って、筆者を置いていかないで。お願いだからちょっと待って!

 

「あ……あおさん……あつい、熱いよ……」

「水花ちゃん……僕もちょっと……熱いかなっ……」

「ああっ、あおさん、来てっ……私と、私と、一緒にっ…あんっ……」

「水花ちゃん………水花……そんなにきつくっ………んっ……」

 

かすかな月あかりに照らされながら絡み合う二つの美しい裸身が、ほぼ同時に痙攣を起こした…………っておいいいっ!これ以上書かせないでくれよっ!お願いですから、お願いですからどなたか流れを変えてくださいっ!

 

そんな時、筆者の願いへ答えるかのように、開かれた窓から影が侵入し、寝台へと忍び寄った。

 

その影は、二つのぐったりとした裸体をじっくりと見つめている。

 

そしておそろしく小さな声を、ゆっくりと発した。

 

「パンパカパーン……!突撃、隣の晩ごはーん……!なんちゃって!」

「はぅっ……!?」

 

ベットカーテンの向こうから、悦びに溶けている佐脇ちゃんの声が漏れた。不意を突かれたせいで、ひどく間の抜けたような声になっている。

 

「あ、あおさん……そこに……」

「あー……うん、そうだねぇ」

 

白けきった声がした。もちろん佐脇ちゃんじゃありません。にっかり青江さんですよ、うん。

 

賢者タイムはおろか、悦びの余韻すら味わうことが出来ないせいで、青江の見かけはひどく冴えない有り様となっている。普段の青江なら、世の女たちを引き寄せる魔性の美しさにあふれる男(付喪神)だった。

 

しかしいま、彼の見かけは第三者の武力介入のせいで、台無しになっていた。いつもなら妖艶とした光をたたえている両目も、無機質な何かに成りはてている。

 

いやぁ、そりゃそうでしょうね。ハードに楽しんでいたのに、邪魔されたわけですから。

 

「んっ……あおさん……そこにいるの誰……?」

「本当に誰だろうねぇ、こんな無粋なことをするおバカさんは。まあ、考えるまでもないけど」

 

そう吐き捨てるように青江は言うと、ベットカーテンをさっと開ける。

 

「オッス!ボクちゃん星乃宮!ボクちゃんわくわくすっぞ!」

 

某スーパー民族な台詞。あー、うん、著作権的にまずいからダメだぞ。

 

とにかくそこには、ピンクとホワイトのツートンカラーで染められた髪を持つ少女のような少年が立っていた。

 

ほっそりとした肢体にまとっているのは、キラキラと可愛らしい音が響きそうなほどキマッた忍者コスチュームだが、機能的なものは何も備えていない。

 

えー、要するに、全体としては某オタクのフェスティバルにいそうな、とんでもないぐらい完璧なコスプレイヤーみたいな感じなのだ。頭頂あたりにひょいと傾けて無造作に被った狐のお面が、じつに奇妙な印象を与える。

 

「君、たしか政府の特命で出かけていたはずだよね」

 

不自然なほど説明口調で、青江がたずねた。

 

「ピンポンピンポンピンポーン!ボクちゃんついさっきまでお仕事してたのーっ!え、どんな仕事かって?……こんな一発ギャグみたいな二次創作に、仕事の設定なんてあるわけないじゃん。いちいち突っ込むなよ。……ったく、オタクって奴は細かいところを……え?台本にない?……あー、そうなんだー……とにかく、とにかくだよボクちゃん頑張ったよーっ!はいこれ、政府からの密書ーっ!」

「いかにもその場限りの設定だね」

「やめろよ、青江の兄やん。それ以上言ったら筆者が怒るぜ。とりあえず読んでくれよ。そうしないと話が進まないしさ。な、分かるだろ?ボクちゃん出世したいんだよ?こんな一発キャラじゃなくて、青江の兄やんみたいなレギュラーになりたいんだよっ!はやく刀ミュに参戦したいんだよっ!」

「ああ、そうだね。正直、君の言っていることがよく分からないんだけど……僕たち、まだまだ楽しみたいんだ……ね、佐脇ちゃん?」

 

佐脇ちゃんの愛らしい忍び笑いがもれた。まるで花の妖精のように儚い声音が、ゆるやかに空中を漂う。彼女の声を聞いただけで、世の野郎どもらため息やら驚きやら失禁やら……雄として当然の反応を示すことに違いない。

 

わかっている。みなまで言うな。

 

「密書だなんて。政府の方々はなにを企んでいるのでしょうね」

「ボクちゃんから申し上げかねます、水花のママン!今日も可愛いね、水花のママン!ボクちゃんのお嫁さんになっry

 

「佐脇ちゃん、はやくそれ読んだら?」

「そ、そうですね」

 

星乃宮が差し出した密書を、ベットカーテンの向こうからのびた手が受け取った。白くほっそりとした指からは、かすかに女の香りを漂わせている。ついさっきまで、彼女の指は青江という雄を弄んでいた(やっぱりこういう表現しかないよね)。

 

「星乃宮くん、ごくろうさまです。しばらくはゆっくりお休みください」

「密書は読まないんですか、水花のママン」

「今読むとお話が進みませんし……それにきっと筆者さんは、密書の内容なんて考える余裕なんてなかったでしょうから……これ以上は、ね?」

 

寝台上で美形のにっかり青江に抱きしめられ、魅力的な裸体をあらわにしていた佐脇ちゃんは、聞き取れないほど小さく呟いた。

 

「あー、そうなんだねー。ちゃんと考えとけよな、筆者。……まあ、後で読んでね。その密書、ボクちゃんのスペシャルな過去設定に繋がるかもしれないしっ!ね、読んでねっ!?ボクちゃん出世して、刀ミュに参戦したいんだっ!」

「はいはい……あっ」

 

佐脇ちゃんはそれ以上応えなかった。再び甘い声を漏らしたのは、寄り添っていた青江が彼女への愛撫を再開したのだ。

 

「ああ、待って、あおさ……まだ、まだお話が終わって……んっ」

「熱いっすね、お二人さん」

 

星乃宮が声をあげた。いやぁ、そういうお二人なんでね。筆者もこれ以上書くと、文字酔いしそうですわ。

 

「まあ、いっか!次はスペシャルな過去設定書いてくれよなっ!」

 

星乃宮はそそくさと寝台を後にした。

​●星乃宮乱舞 3

佐脇水花は、荒野にただ一人立つ星乃宮の後ろ姿から、視線を外せなかった。

 

分かっていた。そう、全て分かっていたのだ。

 

水花は涙に濡れた顔で、星乃宮を見つめ続けた。

 

そこにいるのは、ただの刀剣男士などではなかった。刀剣男士すべての頂点に立つべき存在、選ばれし刀剣男士だった。

 

「星乃宮村正……」

 

水花は形のよい眉に緊張をしめしながら呟いた。彼女の美しい声は、鈴の音のようにふるえて、虚空へと溶ける。

 

「お願い……どうか……私たちを……助け……」

 

そこまで呟きかけたところで、星乃宮が後ろを振り向いた。みずみずしい桜色の髪が、弾むように揺れうごく。

 

星乃宮は見つめられていたことに気づいたのだろう。彼の口元に、ひどく恥ずかしげな微笑が浮かんだ。その子供のようなあどけなさが、水花の心を締めつける。

 

水花の目に新たな涙が盛り上がった。

 

すると星乃宮は、大きく息を吸いこんだ。まるで試合にでものぞむ時のように、体に力をこめる。彼の気力は炎のように燃え上がった。刀のずっしりとした重さが、頼もしさへと変わる。

 

「僕にまかせて」

 

そう言うや否や、星乃宮は周囲をうかがった。敵影(おそらく、時間遡行軍だろう)は、決して少なくない。そのうちの一人が、星乃宮に襲いかかる。

 

「星乃宮くんっ!」

 

自分が感じたなにかを努力して無視しつつ水花は叫んだ。彼女の弱々しい声が響きわたる。ふっくらとした頬がバラ色に染まり、瞳がうるんだ。体全体が……ことに内面だけが熱くなっていた。

 

水花は口を押さえる。彼女はまるで、芸術作品を鑑賞するような心持ちで、その光景を眺めた。

 

次の瞬間、星乃宮は跳躍する。

 

流れるように自然な動作で、首筋に剣を振り下ろす。チーズでも切ったような感触とともに、敵の首が胴体からたたき落とされ、血液が噴水のように吹き上げた。

 

しかしそれでも、星乃宮は止まらない。彼に備わった暴力本能は、狂った音を奏でながら、舞いおどる。

 

続いて星乃宮は、異変に気づいた他の遡行軍たちへと、刃を向ける。

 

彼は着地と同時に、再び跳躍した。空中で敵の頭へと振りおろす。鍛えあげられた筋肉と、打刀星乃宮村正の重量、そして落下速度が合成された打撃は強力だった。

 

星乃宮村正の刃が一閃するたび、遡行軍の頭がスイカのように弾けとんでいく。

 

「お、お前は………まさか……星乃宮村正!?」

 

突然の攻撃に腰をぬかした一振の遡行軍が、後ずさりながら叫んだ。

 

「その通り!」

 

星乃宮は着地して、さらにもう一振の遡行軍を切り伏せる。

 

「僕は打刀・星乃宮村正!村正シリーズのスペシャルななななななななななななななななななななななななな

 

『星乃宮さん?』

 

………………

 

『星乃宮さん』

 

………………んごっ

 

『起きなさい、星乃宮さん!』

 

んごごごごごっ……

 

『………………』

 

ペチンっ!

 

「ういっ……いっ……てぇ……何すんだよパパン……」

 

頭をおもいっきりハリセンで叩かれた星乃宮は、ヨダレをだらだらと垂らしながら、目覚めの第一声をあげた。

 

ちんちくりんの星乃宮がのたうっていたのは、反省室に設けられた机と椅子の間である。反省室とはいうものの、部屋そのものは審神者会議用の書類やら参考書がぎっしりと並べられている。星乃宮にとっては地獄みたいな空間でしかなかった。

 

しかも状況は最悪だった。朝だし、これからたぶん畑仕事があるし、なんつーてもパパンこと石切丸が仁王立ちして、おっかない顔をして見下ろしている。

 

なんつーか、実に怖いお顔。蛙にガン飛ばす蛇、息子が隠し持っていたエロ本コレクションを発見したPTA役員の母親のごとく、おっかないお顔をされている。

 

「どれだけ言っても君が起きないからだろっ!水花さんから君の世話係を頼まれているんだっ!……とにかくはやく起きなさいっ!ほらっ!」

「あんっ……ダメェ……そんなに強く……あんっ、そこは……あっ」

「気色の悪い声を出すのはやめなさいっ!私は君の頭をハリセンで叩いているだけなんだからっ!」

 

「えー……水花のママンだって毎晩こんな声だして、青江の兄やんを興奮させてんじゃん。いいなぁー、毎晩毎晩楽しそうだなぁー、ボクちゃんもはやく“刀さに”ジャンル行ってみたいなぁー毎晩毎晩可愛いママンたちとry

 

「朝から訳の分からないことばかり言うのはやめるんだ!とにかくはやく起きなさいっ!」

 

ペチンペチンと星乃宮の頭をハリセンで叩き続ける石切丸。いやぁ、朝から本当にお疲れさまですなぁ。でもそんな石切丸が可愛いと思っていたりする。あ、いや、すいません。

 

とにかく石切丸は、なんか変な文章が途中まで書かれた反省文(まあ、つまりそういうことですわ)へちらりと視線をはしらせ、やがて疲れきったようにため息を漏らした。

 

「刀剣男士すべての頂点に立つべき存在、選ばれし刀剣男士……なんだいこの妄想にまみれた小説は……どうしてこんなものを反省文に書くんだ……君は行儀作法の稽古をサボって、軍事くうでたぁ(クーデター)計画などというふざけた計画書を政府に送りつけて」

「あーわかったわかった、ごめんごめんって。ボクちゃんもレギュラーキャラに昇格しそうだしさぁ。そろそろ必要じゃん?キャラ設定みたいなの。もちろん、怒ると髪が金色に輝くとか、殺人光線を発射するとかそういうのじゃなくて。 ま、著作権的にまずいかぁー!例えば超スペシャルな真名があるとか……!実は神剣だっとかぁぁカッコいいよねぇぇっ!星切丸とかいいと思うんだっ!その名の通り、流れ星を切ったみたいな伝説が」

「そんなものを反省文に書くのはやめなさい。しかも私に関わる話が混じっている気がすんだが……いや、とにかく駄目だ、星切丸なんて。まるで私と君が兄弟みたいじゃないか。君は村正派なんだから」

「えー……これならボクちゃんとパパンが、一部特定の女の子たちが喜ぶ関係に」

「ならなくていいんですっ!」

 

石切丸は思いっきり不機嫌そうに自分よりずっと小さい星乃宮を見下ろし、まったく、とか、どうして私なんだ、とか、シビアすぎるつぶやきを漏らした。あー、なんかもうそんな石切丸が可愛い。とっても可愛い。可愛い子ほど困らせたくなっちゃう。あ、いやいや失敬。コホン。

 

「……それにしても最後のところ……“なななななな”とはなんだい?若い子たちの流行り言葉かな?それとも斬新な文学表現?正直、呪詛の類だと思ったよ。ずっと読んでいたら気が狂いそうだ。今すぐお払いをしたいところだよ」

「パパン、たまに酷いこと言うよね……ボクちゃんね、書いてる途中で寝ちゃったんだー(ぶっちゃけバトル描写が苦手な筆者が、途中で書けなくなって放棄しただけなんだけど)……ね、どう思うこのお話?」

 

「うーん……私では何とも……例えばこの“選ばれし刀剣男士”というのは今さらすぎる気が……いや、いやとにかく星乃宮さん。反省文に書く内容ではないからね。反省文を書き終わるまでは、次の登場はないと思いなさい」

「えーっ!それって要するに、筆者がその気にならなきゃ書いてくれないってことじゃんっ!それじゃあボクちゃん一発キャラに逆戻りだよっ!……てかもう筆者に語りかけるこのネタ、そろそろ飽きられそうだよな……」

「訳の分からないことばかり言うのはやめるんだ。さあ、今すぐ反省文を書きなさい」

「へいへい」

 

……とまぁそうしたわけで、星乃宮は反省文を書くことになりました。

 

星乃宮の意見は間違ってないのだ。この作風色々と問題がありすぎて、毎回書くのには限界があるのだ。おまけに、飽きられるのもはやい作風なのだ。

 

この危機的状況を察した星乃宮だが、創作キャラクターでしかない彼に、どうにかする力はない。

 

いや、つーか刀剣男士なのに刀剣男士らしい話がひとつもないよな。